Semifinals Yamane Yoshiyuki vs. Hori Tetsuya

By Syouyama"傍観者"Youhei


UGクロックパーミ


準決勝はクローシスカラーのリアニメイトを駆る山根と青緑クロックパーミを操る堀の対戦をお届けする。
ここまで来ればもはや細かい説明は不要だろう。

激戦をくぐりぬけてきた巧者VS巧者の、芸術とも言える技巧のぶつかり合いに目が離せない。

両者押し黙って念入りにシャッフルをするなど、開始前から緊張感の漂う試合である。
準決勝ともなるとやはり勝利にかける執念も違ってくるのか。

何しろ、東京チャンプという肩書きはなかなかに得難い。得難いものほど価値があるのは当たり前である。
今回の参加者は前年度より100人増、脅威の256人ということもあって、言い換えればさしずめ「GP代々木」といったところか。
「都道府県選手権はお祭り」とはいえど、その規模はちょっとしたGP並であると言っても過言ではないだろう。

互いの威信を賭けて価値あるものを手にいれんと今、百戦錬磨のプレイヤー同士がぶつかりあう。



Game 1
先攻後攻のダイスロールは山根が2を出せば堀が2の鏡打ち。6を出せばさらに6、と。
漂う空気とは対照的に試合とは別のところで火花を散らしあう二人の姿がある種、微笑ましくもある。
三度目の正直、と。最終的に3を出した堀に対して5を出した山根が先手を取ることとなった。

しかし山根、先攻をとったはいいが土地が2枚の《宝石の洞窟/Gemstone Caverns》のみのオープンハンドを抱え、色マナの出る気配の無い手札をテイクマリガン。
ここ一番の局面でこのマリガンは痛い。空気が読めないとはまさにこのことか。

しかしマリガン後は好ハンドをキープし、1ターン目に《睡蓮の花/Lotus Bloom》を待機させる立ち上がり。
準決勝では互いのデッキレシピが事前に筒抜けとなっているだけに早くも堀の顔が曇る。

返す堀は《極楽鳥/Birds of Paradise》を出したのみでターンを返す。
のみ、といっても通常であれば絶好のスタートである。

待機状態を経るとはいえ、《睡蓮の花/Lotus Bloom》のマナ加速が非常識すぎるのだ。
山根のデッキがリアニメイトであることは事前に堀も心得ているため、一瞬の隙が勝負を分ける。
現環境の主要なカウンターである《差し戻し/Remand》や《マナ漏出/Mana Leak》が大量のマナ加速に弱いことはすでに周知の事実であろう。

続いて山根は《思考の急使/Thought Courier》を繰り出す。
いわゆる「ぶん回り」を予感させる立ち上がりだ。


堀はデッキのキーカードである《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》を追加する。 

山根はメインで《思考の急使/Thought Courier》を起動し、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をディスカードする。
「いつでも釣れるぞ」と、直接語りはしないがその行為が暗に語る。

普通は温存しておく場面だが、相手が青緑であることからか安心して2枚目の《思考の急使/Thought Courier》をプレイして山根はターンを返す。
一歩ずつ、だが着実に山根は勝利への階段を駆け上がりつつあるように見える。

RBUリアニメイト
山根

これをなんとしても阻止したい堀だが、ここは冷静に《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》で殴るのみでエンドを宣言。

返す山根はまずメインで《思考の急使/Thought Courier》の1体目を起動し、《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》をディスカード。
あとは「釣竿」さえなんとか通すことができれば、といったところか。続いて2体目を起動し、ディスカードは《稲妻の斧/Lightning Axe》。
釣られる対象であるデカブツを落とすことができるだけに除去の選択としては非常に面白い。

さらに堀は《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》で殴り、《繁殖池/Breeding Pool》をアンタップインでエンド。
堀の場に土地はこれで4枚。誰がどう見ても《神秘の蛇/Mystic Snake》の構えである。
もう少しクロックが強ければこのパターンは山根にとって脅威になりうるのだが…如何せんスプライト1体ではダメージクロックと呼べるかどうかも微妙である。

さらに山根はメインで《思考の急使/Thought Courier》を起動して手札の充実を図る。
1枚の《神秘の蛇/Mystic Snake》をものともせず乗り越えてゆける手札を目指して。

堀はどうやら逆事故気味のようだ、さらに《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》でアタックし、《ペンデルヘイヴン/Pendelhaven》で強化するだけに留めた。
ここまで来たら迂闊に動いた方が負けである。堀は《神秘の蛇/Mystic Snake》の構えを崩さない。

と、山根はついに動いた。
5マナを残してターンを返した堀に対してまずは《戦慄の復活/Dread Return》。
これには予想通り《神秘の蛇/Mystic Snake》が躍り出るが、ここに狙い済ました《差し戻し/Remand》が!

1マナしか浮いていない堀は苦い顔でこれを通す。
ここで《呪文嵌め/Spell Snare》をキャストできれば流れはだいぶ違ったものになるのだが、残念ながら堀の《呪文嵌め/Spell Snare》はサイドに眠ったままである。
山根も事前に堀のデッキレシピがわかっているだけに安心して勝負をしかけることができたのだろう。

ここでは《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が降臨し、《極楽鳥/Birds of Paradise》と《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》に1点ずつとプレイヤーに3点という、一分の無駄も無い、ある種の詐欺臭ささえ感じる取引きを行う。
さらに好ハンドに満足したのか、《思考の急使/Thought Courier》2体で攻撃を仕掛けて山根は攻勢のフォームを取る。


逆転劇が展開できるとしたらここしかないのだが…。
堀は無念そうに《極楽鳥/Birds of Paradise》を追加するだけでエンド。

山根は《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》で殴った後に《強迫的な研究/Compulsive Research》を打つがこれは《神秘の蛇/Mystic Snake》されてしまう。
だが、依然として山根が優位なことには変わりない。落ち着いてターンを返す山根。
人間な《マーフォークの物あさり》

やれるだけのことはやろうと《神秘の蛇/Mystic Snake》で果敢に攻め立てるが…。
ここ一番のシーンで堀は逆事故から未だ抜け出せずにいる。
その間にもエンドに山根が《思考の急使/Thought Courier》を2回起動し、量より質、とばかりに手札を充実させる。

さらに山根はメインで《強迫的な研究/Compulsive Research》をキャスト。
堀は考えた末、これに3枚目の《神秘の蛇/Mystic Snake》を。
1枚でも有効牌を引かれたらきついとの判断か。

山根の手札と堀の敗色がどんどんと濃厚なものになっていくのが目に見えて感じ取れる。

結局《強迫的な研究/Compulsive Research》は素直に消され、堀にターンが渡る。
しかし堀はため息が止まらず、相も変わらず無念そうにターンを返すのみ。
まだ《極楽鳥/Birds of Paradise》をブロッカーにすればあと1ターンが残されている!

フラッシュバック付いてるリアニ
はずだったのだが。

まず山根はアタック前に《極楽鳥/Birds of Paradise》に《稲妻の斧/Lightning Axe》を。
《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》がレッドゾーンに送り出され、いつの間にか8にまで落ち込んでいた堀のライフは2へ。

山根のライフは9。堀の場には2体の《神秘の蛇/Mystic Snake》が。
《心霊破/Psionic Blast》や《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の存在を考えると、堀にワンチャンスは確かにあったように思えるが。

山根はこの局面で《溶岩の斧/Lava Axe》がカウンターされなかったことにより相手の手札にカウンターが無いことを読み切ったのか。

迷わず《思考の急使/Thought Courier》2体と《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をコストにして《戦慄の復活/Dread Return》を
フラッシュバックしてみせることによって再び紅きドラゴンを戦場へと呼び戻し、準決勝にふさわしい鮮やかな勝利を飾ってみせたのだった。


山根 1-0 堀

サイドボーディングは以下の通り。

・堀
【In】 【Out】
《呪文嵌め/Spell Snare》3 《心霊破/Psionic Blast》3
・山根
【In】
《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》4
《煮えたぎる歌/Seething Song》4
《睡蓮の花/Lotus Bloom》1
《炎の儀式/Rite of Flame》3
《火想者ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, the Firemind》1
【Out】
《思考の急使/Thought Courier》4
《戦慄の復活/Dread Return》4
《絶望の天使/Angel of Despair》2
《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》1
《差し戻し/Remand》1
《死後剛直/Vigor Mortis》1

堀は事故さえなければメインボードの相性で勝てると判断したのか、構成は殆ど変わらず。
対する山根は《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》デッキへとオフェンシブサイドを図る。
ばれているのは百も承知であるが、奇襲効果は得られずとも相性的にはこちらの形の方が有利との考えか。



Game 2
堀、次こそはと意気込んで先攻を取るが、オープンハンドにいきなり頭を抱え込むこととなる。
悩んだ末にこれをキープするが、割り切って一種の博打に出たということであろうか。
時にはこういった割り切りも大事である。つまるところ引ける引けないは結果論なのだ。

山根はまたしても好ハンドに恵まれ、落ち着いてキープ。
今度はしっかり後手から《宝石の洞窟/Gemstone Caverns》を出した状態でスタート。

堀は土地を並べてターンを返し、山根のエンドに《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》をキャストする。
そしてしっかりと1点のダメージを刻み、土地を置くのみでターンを返す。

返す山根も《ディミーアの水路/Dimir Aqueduct》をセットするのみ。

山根のエンドに2枚目の《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》が更に登場するが、堀は2体でアタックするのみで土地を4枚立ててエンド。

《神秘の蛇/Mystic Snake》の影が山根の脳裏をよぎる。
さらに土地を置くのみで山根はターンを返し、堀は《オーランのバイパー/Ohran Viper》を追加してようやく攻勢らしい攻勢に移れそうだ。

サイド後、吹き荒れる嵐!
堀が立てているのは2マナだが、山根がオフェンシブサイドによって《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》デッキに成り果てているのもまた承知のうえなので堀の手札には何らかのカウンターがあると推測できるが。

山根は今しか無いと踏んだのか、これを承知で動く。
《炎の儀式/Rite of Flame》を2枚重ねた後に《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を降臨させるが、これによるダメージは綺麗に《粘体マンタ/Plaxmanta》でかわしてみせる堀。

《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》2体と《オーランのバイパー/Ohran Viper》、それに対して《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が睨み合う展開。

返しの《オーランのバイパー/Ohran Viper》をブロックして《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》は一旦退場することとなる。
いくらアドバンテージをとられるわけにはいかないといっても一見勿体無いように見えるこのブロックだが…。

返しの山根のプレイには思わず納得。
手札からこぼれ落ちる《ゾンビ化/Zombify》!

なるほど、cip能力を考えればこちらの方が効率が良い。
堀の生物が一掃され、無人の荒野に紅きドラゴンが再び舞い降りる。

返しで出るは《幽体の魔力/Spectral Force》!
堀のデッキ構成を見るに、勝機があるとすればこいつを活かす外無い。
ここが踏ん張りどころだ。

《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》がアタックし、返しで《幽体の魔力/Spectral Force》がアタック、と互いに斬り合う形となる。

これによって両者のライフは山根が7、 堀が14。

《幽体の魔力/Spectral Force》が殴ったのみでターンを返す堀。
さらなるクロックを追加できないのは大きな痛手だ。

返しで《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が再び殴り、堀は9に。

堀の《幽体の魔力/Spectral Force》は起きず、ドローにも恵まれないようでそのままターンを返す。

対照的に軽快に土地をを置く山根。堀のライフだけが削れてゆく。
やはり《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》が打ち落とされたのが痛かったか。
彼女が生き残ってれば展開も随分と違ったものになっていたかもしれない。

こうなってはさすがの「スーパーファッティ」《幽体の魔力/Spectral Force》も置物同然である。次のターンまで堀は無防備なのだから。
しかしながらいくら山根が優勢とはいえ、ただただアンタップしたままの堀の土地が不気味である。

先程の神秘の蛇が頭をちらついて離れないのか、長考する山根。
ここまでアクションが無いと「まさか」を感じずにはいられない。
この局面において「まさか」を絶対に許すわけにはいかないのもまた事実だ。

しきりにハンドや墓地、土地の数を気にし、熟考するが。
結局、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を立たせたままでエンドした山根。

そして《幽体の魔力/Spectral Force(TSP)》が動き出す。

今度こそ。
ワンチャンスがあるとしたらここしかない。
観客も筆者もある種の逆転劇を期待してすらいたが。

そして堀は《幽体の魔力/Spectral Force》に《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》を。
ヒヤリとする山根。「まさか」…。

これで《幽体の魔力/Spectral Force》は実に11/11のヘヴィアタッカーである。
迷わず殴る堀だが、アタックに対応して無情にも《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》がさらにもう1体。

能力で1点を《幽体の魔力/Spectral Force》に。
そしてもう4点をプレイヤーに。

続けて《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》のダブルブロックにて丁度《幽体の魔力/Spectral Force》は致死ダメージを与えられ、3体は仲良く墓地へ。

この時点でライフは山根が6で堀が5である。
スーパーファッティ!

何か持たれてたら負け。
手札と相談してそう結論付けた堀がタップアウトしつつ《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》を追加してターンを返すが。

だが運命とは実に残酷なものである。
山根は土地を起こすや否や、ここぞとばかりに《ゾンビ化/Zombify》を勢い良くテーブルに叩き付けた。

かくして三度プレイグラウンドに紅きドラゴンが降り立ち、堀が僅かに抱いていた勝利への希望は無情にも紅蓮の炎の中に飲み込まれることとなった。

ぴったり。


山根 2-0 堀

Result: 山根 由幸 WIN!